現代と過去との子供の生活環境の違い

日本体育・学校健康センターの【学校の管理下での災害(基本統計)】によると、子供の骨折の発生率が30年前に比べて、約2倍になっているといいます。骨折箇所は、足よりも腕・手に多い事から見て、「筋力」「瞬発力」「平衡感覚」などが低下して転倒しやすい、あるいは転倒した時の防衛動作がとっさにとれない、といった事が骨折の原因と考えられます。そして骨折の原因である体力や運動能力の低下は、運動不足が原因だと考えられます。

30年前と現代では、子供のまわりを取り巻く環境が大きく変わっています。空き地は姿を消し、自動車の台数は増え、外で遊ぶ事も一人では危険な状態になっています。かくれんぼも治安上、場所によっては危険な遊びにはならないでしょうか?やがて子供が成長してくると塾や習い事、テレビやゲームなど、外でのびのびと身体を使って遊ぶ事から遠ざかっていきます。

対策としては、習い事などにスポーツを取り入れてみたり、テレビやゲームに対して時間を決めさせて、親の方から子供に対して身体を使った運動を促してあげるのが良いと思います。園や学校など教育の現場では、幼い頃からの運動による「遊びの教育」を通して、子供達の運動不足傾向を改善をはかる必要があるでしょう。

食育と足成(そくせい)

近年朝食を取らない子供が増えていると聞きます。「食」はカルシウムなどの栄養を摂取し、骨や身体を丈夫にするだけでなく、「健康」「生活」「精神」に至るまで、生きるために必要な基盤です。「食」が乱れると生きる力が損なわれます。「食」の乱れを正して、健康で豊かな人間性を育てていく事が「食育」です。平成17年に【食育基本法】が設立しました。「食」をしっかりと見つめ直して、バランスのとれた食事を3食、規則正しく取る事は、子供の身体に必要不可欠なことです。

■ 大型バスに小さなエンジン ■
さて、何の事でしょう?【学校保険統計調査報告書】によると、子供の身体は昔に比べて「身長」「体重」共に大きくなっています。しかしながら【体力・運動能力調査結果】を見ると逆に低下しています。特に足を主に使った運動能力の低下が見られます。これは身体の大きさに対して、足腰の力が伴っていないと言えます。

文部科学省のHPはこちらから

身体のバランスの悪くなった現代の子供は、自分の思い通りに身体を動かせなくなって「転びやすい」「とっさの受け身が取れない」ことから、ケガや骨折につながる事もうなずけます。そればかりか、子供の運動イメージや欲求に対して身体がついて行かず、ストレスが溜りやすくなります。これらの事から考えて、現代の子供の身体の異変が、心にまでも影響を及ぼしているとは言えないでしょうか?

【文部科学省の教育白書】によると、現代の子供の約80%が「いらいら、むしゃくしゃしている」、小学生の55%、中学生の78%が「不安を感じている」、小学生の33%、中学2年生の66%が「疲れている」。これは異様な数字です。近年増加している少年犯罪やイジメ、自殺はこれらの事に密接な関係があるのではないでしょうか?

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子供達に自由にのびのびとした成長と、更に「積極性」「創造性」「集中力」も与えるとっておきの味方、それは「土踏まず」です。「土踏まず」は人間の運動能力のとても重要な役割を果たしています。とはいえ、生まれつき備わっているものではありません。足を使った運動により、徐々に形成されていくものなのです。幼児のうちからたくさん運動させて「土踏まず」を形成させ、足の発育から心身共にバランスのとれた身体つくりをしていきましょう。そして「食育」もプラスして「食育足成(しょくいくそくせい)」の推進が必要ではないでしょうか。

土踏まずの役割と形成

「土踏まず」とは足の裏のくぼみの事で、その役目は衝撃をやわらげるクッション、足骨の保護、歩行時のあおり動作(爪先で地面を蹴り、かかとで着地する事)の効率を高める事にあります。「立つ」「歩く」「走る」「跳ぶ」為の重要な役割を果たしています。「土踏まずの未形成」が及ぼす悪影響は、長時間立ったり、長距離を歩いたりすると足が痛み、疲れやすくなる、足の踏ん張る力が弱く身体のバランスが悪い、反射神経が鈍く敏捷性に欠ける。これらにより、転びやすく疲れやすい足になり、運動不足を引き起こし、足の健康な成長を妨げるのです。

実は足の役割は全身の筋肉の2/3を占める「足の筋肉」が、血液やリンパ液の循環を助けるポンプの役割もしています。
「立つ」「歩く」「走る」「跳ぶ」刺激は脳を活性化させて、血液好循環と共に脳の発育を促進させます。「土踏まずの形成」は結果、「積極性」「創造性」「集中力」をも生み出し、活発で健康な子供達の心と身体を作るとっておきの味方になります。

「土踏まず」を育てるには、とにかくたくさん足を使う事です。特に「歩く」事。徒歩の通園児と乗り物を使った通園児とでは明らかに徒歩の通園児に「土踏まず」が多く見られ、特に長距離の通園児に「土踏まず」の形成率が高い事が解りました。

「土踏まず」の形成には裸足が一番効果的です。人間が普通に歩行する場合、まずかかとが地面につき、次に小指から弟二指、順に親指まで外側から接地して蹴るのです。これを「あおり歩行」と言い、「姿勢が良く」「バランスのとれた」「腰の入った」歩き方になります。この足の指全てを使う「あおり歩行」により、足裏を鍛え「土踏まずの形成」を早める事が出来ます。足の指全てを自由に使うには、靴やスリッパよりも、やはり裸足が一番です。

とはいえ、どこでも裸足という訳にはいきません。履物は足を様々な危険から守ってくれる素晴らしいものですが、出来れば足の指をしっかり使える靴や、足袋、下駄、わらじ、そして健康ぞうりをお勧めします。特に鼻緒の付いたものは、親指の付け根付近にある「肝機能を高めるツボ」も刺激してくれます。子供のデリケートな足にピッタリの一足を、ぜひ探してあげてください。

ぞうり工房 福路屋